「青春の殺人者」の長谷川和彦監督作品ですが、長谷川監督作品はこの2本のみ。
破滅の美学を描いた、斬新で破天荒、アナ―キ―、大胆不敵、荒唐無稽・・・そんな映画です。
「太陽を盗んだ男」の大まかなストーリーは・・・
中学校の物理教師城戸(沢田研二)が、東海村の核施設からプルトニウムを盗んできて、自宅でハンドメイド原爆作って、自ら第9番目の核保有国と称し、日本国政府を脅す。
というかなりギリギリなストーリーです。
テロリスト「9番」として、日本政府に追われる城戸先生がこれまた大暴走でございます。
ギラギラとしていて、なんだかよくわかんないパワーが溢れている映画です。
当時アイドルとして全盛期だったというジュリーさんにはかなり思い切った選択だったんじゃないかな、と推測します・・・だって城戸先生アナーキーすぎる(笑)
こんな脚本書いちゃったレナード・シュレーダー氏がスゴイなぁ、と。
エンターテイメント映画としても社会派映画としても楽しめると思います。
社会派という意味は核や原発がどうのこうのということではなく、若者の社会や国家への漠然とした不満、国家に要求しようにもなにを要求してよいのかわからない、というフワフワとした若者像を描いている、ということです。
要求したいこともないので、無理矢理要求するその内容がまた笑えるけとリアルだと思いました。
日本の学生運動が下火になった時期に成人を迎え、何事にも関心が薄く、冷めた世代「しらけ世代」の若者を描いているんですけど、驚くほどに今の若者や自分が若者だった頃と同じような感覚なのです。
こういう若者像は今や普遍的なのかもしれません。
城戸が追い詰められて諦めきったときの表情がやたらセクシーなのは、ジュリーならではなのかも。
そういうわけで昔の映画でも古臭い感じは全くなくて、むしろアイデアが斬新な分新しく感じました。
ここまで監督がやりたいことを暴走気味にやってる映画は最近はもう見ないです。
城戸は生徒からもツッコミ食らうほどのヤル気なしのポーッとした無気力教師だけど、帰宅すれば物理オタクで、ものすごく一生懸命に原爆を作っています。
無気力城戸先生もこのときだけはテンションが高く、描き方がミュージックビデオみたいにオシャレで楽しいのです。
「鉄腕アトム」歌って、オーブンで「チーン♪」
みたいなおバカな感じで笑えたりもします。
勿論黙々と原爆を作っているので台詞もほぼないのですが、とにかくジュリーのフェロモンがドバドバで目が離せなくなりました。
そういう訳で、何年か前にニュースで沢田研二さんが「バイバイ原発」っていう反原発ソング作ったとかやってるのを見た時は、コーヒー吹いてしまいましたが。
「9番」城戸と対峙する山下警部は、故菅原文太さんが演じていて、これが色々と物凄いです。
生身の人間のターミネーターという感じで、なにやっても不死身の山下警部、怖すぎた!
「どんだけ被弾したら死ぬんですか?」って感じです(笑)
そして「俺は国家の犬だ!」ってものすごく狂犬で下品で素敵です。
間違いなく文太さんの代表作だろうと勝手に思わせて頂いております。
そして沢田研二さんを城戸役にどうだろう?と監督にオススメした人が文太さんだそうです。
この映画、そのまま東京観光案内みたいな感じで、皇居、国会議事堂、新宿、渋谷など都内の名所なんかで撮影されています。
が、内容が内容だということもあるのかもしれませんが、ゲリラ撮影らしいです・・・そりゃ皇居であんなシーンはゲリラしかないだろうなぁ、と思いました。
名所が写りこんでいるところ以外は、別の所で撮っていそたりもするようです。
国会議事堂前のゲリラ撮影は、警察にパクられたとき用のB班を待機させて撮影して、しかもB班監督が故相米慎二監督だったと・・・たまげました。
それに普通に通行人が「あ、なんか撮影やってんな。」って感じでガン見しながら通りすぎていったりしています(笑)
無茶をしているのはスタッフだけじゃなく、キャストの無茶っぷりもすざましいです。
本当にギラギラとしたエネルギーのある大好きな映画です。
最近の映画は小説や漫画のリメイクばかり。
この映画みたいにグイグイ引っ張ってくれる斬新なオリジナル映画が出てくれるといいな、と思います。
DVD
○科学技術館屋上(九段下)&武道館
引用:Toho Cinema
山下と対峙するシーンは、九段下科学技術館の屋上です。
後ろにはローリングストーンズのコンサートの武道館
○皇居 坂下門
引用:Kentaro Ohno
バスジャックのシーンは皇居の坂下門。
沢井零子がここの住友ビルで城戸を発見。2人で支えていたのが住友ビル。
○東急百貨店 (渋谷)
引用:街画ガイド
東急百貨店の屋上の遊園地のシーン。今はもう遊園地はないです。
今の渋谷のランドマークはヒカリエや109なのかな?昭和の時代はココでした。